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脳は否定形の言葉を理解できない(繁藤月報-巻頭言 2024.8)

言うことをきいてくれない子どもたち

夏のおぢばの風物詩、こどもおぢばがえりが今年も開催された。一年で最も詰所が賑やかな時期だ。

今年はとてつもない猛暑だったが、子どもたちは日中に動き回ってなお、夜は詰所で走り回っている。

「走っちゃダメ!」

「布団の上ではしゃいじゃダメ!」

と言っても、ちょっと目を離したらまた騒いでいる。ああ、もうほっておこう…という気持ちになる引率者の方も少なくないだろう。

しげとう詰所「夜のつどい」の様子

子どもが言うことを聞かない原因の一つに、大人の言い方、指示の出し方があるという。

冒頭のタイトルにもある通り、脳科学の分野では『脳は否定形の言葉を理解できない』とされている。

どういうことかを説明する前に、私から皆さんに一つ指示を出そう。

「おぢばの風景を想像しないでください」

どうだろうか。

多くの方がこの指示とは裏腹に、おぢばの風景が目に浮かんだはずだ。神殿や教祖殿を想像する人もいれば、詰所のひとときを思い出す方もいるかもしれない。

おぢばの風景を想像しないでくださいと指示された場合、脳は、

  1. おぢばの風景を想像する
  2. おぢばの風景を頭から消そうとする(否定)

といった流れで脳は処理をするというのだ。

だから子どもにかける指示は「走っちゃダメ!」ではなく、「廊下は静かに歩きましょう」と言葉を変換する方がより良い指示になるのだ。

そして、これは子どもに限った話ではない。

昔、コンビニや居酒屋のトイレには、

「トイレを絶対に汚さないで下さい」

という張り紙がよくあった。しかし、今は多くのお店が

「トイレを綺麗にご使用頂き、ありがとうございます」

という文言に変わっている。

これも脳に働きかける言葉を『否定形』ではなく『肯定表現』に変えた方が、結果お客さんがトイレを綺麗に使ってくれるからなのだ。

マイナスな感情が頭から離れない

こうやって考えてみれば、自分の心と向き合うときにもこれと同じことが起こっているかもしれない。

「嫌いな人のことを考えない!」

と思えば、逆にその人のことが頭から離れなくなる。

「周りの目を気にしない!」

と自分に言い聞かせても、周りの目が気になってしょうがない。

皆さんも一度はこんな経験があるはずだ。

そりゃそうだ。そもそも脳がそういう構造になっているのであれば、あらがいようがない。

だからこそ、自分の中の「〇〇しちゃダメだ!」という『否定形』を『肯定形』に変換していく努力をしなければならない。

例えば、

「嫌いな人のことを考えない!」であれば、

好きなことに没頭しよう。

「周りの目を気にしない!」であれば、

自分の心に寄り添ってあげよう。

「ほこりの心を積まない!」であれば、

誠の心を増やそう。

といった感じだろうか。


オセロを黒から白にひっくり返すように、言葉や考え方を変えてみる。『否定形』が必要なくなると、心の使い方はとてもシンプルになりそうだ。

そして行き着く先は、何を見ても、何を言われても、何が起こっても…『ありがたい』と思える心なのかもしれない。

脳の働き一つからも分かるように、やっぱり親神様は人間が陽気ぐらしをするための身体の設計をしてくださっているのだ。

7月の月次祭における神殿講話は「自分の心に寄り添おう」というテーマでお話をした

終わりに

さて、これで今月の巻頭言も無事に書き終えようとしている。

しかしそんなタイミングで、私の隣にいる2歳の娘が今まさに牛乳をこぼしてしまった。

「もー!さっきこぼしちゃダメやで!って言うたやんか…」

とつい口に出してしまった。さて、皆さんならどんな声をかけるだろうか。

つらつらと偉そうなことを書いた私自身、子どもに対しても、自分に対しても、ひっくり返さないといけない『否定形』がまだまだたくさんありそうだ。

  立教187年8月1日
    天理教繁藤大教会長
          坂 本 輝 男

この写真は長男が2歳のときのもの

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